塾講師&専業家庭教師のつぶやき

気ままな専業家庭教師の裏ブログです。

こんな子は偏差値がポンと上がる

僕は、「どれだけ伸びるか」は2つの要素の相関だと思っています。一つは「その子の潜在能力」。いわゆる地頭(じあたま)の良さですね。そして「それまでの勉強の仕方」。


例えば伸ばしやすいのは、地域の少年野球を一生懸命やっていた、あるいはバレエの発表会があってそれまでは練習練習の毎日を送っていた、そういう生徒。区切りがつくまでは、塾に通うのが精いっぱいで、解き直しや復習などのフォローアップがほとんどできていない。こういう子はちょっとやればポンと伸びます。勉強量の絶対値が不足しているので、伸び白はあるんですね。


「習い事・運動関係に追われていた」子以外にはどうか。


その中で多いのは、日々の勉強がただ「こなす」だけになってしまい、きちんと身につける勉強をしていなかった生徒。宿題がやたらめったら多いWアカデミーとか、有名進学塾Sの生徒に多いですね。長く机に向かっている割には偏差値が伸びない。


「基礎トレもきちんとやっていますし基礎力定着テストも、必ず間違ったところは解き直させています。机には塾のない日は4時間は向かってるんですけど…」


良く聞くフレーズですが、それではテストの点はなかなか伸びないのです。


何が原因で、どうしたら伸びるのか。それはまた次回に。

偏差値は本当のところ、どれくらい伸びるのか

さて。前回、「偏差値39から60は嘘」と述べました。いや、「嘘」は言い過ぎかもしれません。世の中には、特例中の特例として、とんでもなく伸びる生徒もいます。前回ご紹介した、夏休み前に偏差値51で、そこから75近くまで伸びたSさんなどその典型と言えるでしょう。


ですが、それは残念ながら極めて特殊な例であって、普通の生徒には当てはめることはできません。


では、ごく一般的な例として、プロの家庭教師がついたら、どれくらい偏差値は伸びるのか。


普通は、5伸ばすのさえも大事(おおごと)だといってもいいでしょう。


たったの5!高いお金をかけて!
そう思われますか?


そうですよね。慶応普通部めざして4年から塾に行き始めたものの、いっこうに成績は伸びず。塾に相談すると「夏に伸びますから」。
確かに、夏は朝から晩まで、ヒーヒー言いながら机に向かった。これなら秋は期待できるぞ!


だが満を持して臨んだ9月の合不合の偏差値は、6月から微増の51。えー、あんなに頑張ったのに~?
これじゃ、普通部なんてかすりもしない。


こうなったら、プロ家庭教師の力を借りるしかない!


こういう話はいくらでもある。


家庭教師派遣会社の広告にも
「偏差値10アップして、崖っぷちから奇跡の逆転合格!」なんて惹句が大書してあります。


よし。かくなる上はプロの力を借りて…


だがしかし。


まずこのお子さんを60まで伸ばすのは無理です。12月の合不合まで、丸3か月。一回2時間週1回の指導で、10回20時間強しかない。


とてもではないですが、10は無理です。類例を探せば、8月の最終週から始めて12月の合不合まで偏差値6伸びて(6月との比較)、明大中野に受かったU君。9月の第2週に体験授業をし、翌週からスタートして、12月23日の日能研の模試で偏差値5伸びて(9月との比較)、大妻に受かったTさん。これらはもう、ただの成功例ではない、「成功例」の類いと言ってよいです。


よく仲間内で言うせりふ。
「プロ家庭教師は魔法使いに非ず」。


ここで最初の命題に戻りましょう。
Q「プロ家庭教師がついて、どのくらい偏差値は伸びるのか」


A
6年夏のスタートなら、maxで5ぐらい


残念ながら、どうやらこの辺りが現実的な答のようです。


ある同業の先生がこんなことを言いました。「入試までの残りの月数だけ伸びる可能性はあります。ただし上限10」


なるほど。うまい表現、というか、わかりやすい表現かもしれません。4月スタートなら偏差値+10.8月スタートなら+6.うーん…8月スタートで+6か… かなり大変な気がしますが…

このブログを書くにあたって心に決めたこと(2)

このブログを書くにあたって心に決めたこと、その2は、(1)とつながるのですが、「突っ込むべきところには批判を恐れず突っ込む」。


例えば、「???」と思わざるを得ない塾。
例えば、「ありえないだろー」とつぶやいてしまう同業者のブログ。
例えば、(いや、それはまずいでしょ、お母さん)と思わずうなってしまうご家庭。


これこそ匿名だからできること。


まず、例として。


「偏差値39から60にアップ!」


いや、無理です。それは無理。


もちろん、開成に入ったM君の例。彼が小4の夏前にサピックスで受けた入室直後のマンスリーの偏差値は31.入室直後ですよ。ここ大切。それまでレゴブロックの教室と英会話しかしていなかった。テストといっても、小学校でやる色刷りの単元のまとめのワークテストありますね、あれしか経験なし。


偏差値31.むべなるかな、です。


でも彼の6年11月のサピックスオープンの偏差値は68.算数に至っては145点(150点満点)で73.偏差値はなんと42up!!最後は僕よりもはるかに問題解けました。一緒にやって、10問中5,6問は彼の方が速く、しかも正確に解く。「教えることないよ。こっちが教わりたいくらいだ」って言いました。性格のいい、いや性格「も」いい彼は「いやいや、まだまだです。サピで1番じゃないから」って言ってましたが、最後はほんと、何のために家庭教師に行っているか分からなかったですね。


でもこれは偏差値40upとは言いませんよね。
「僕はかつて、ある生徒を偏差値40上げて開成に受からせました」って言ったら人に笑われます。


ほかにも、中3の夏、新教育のWもぎの偏差値が51だったのが12月で75まで上がったSさん。彼女も、区立のソフトボール強豪中学で朝から晩まで部活に明け暮れ、家に帰るとバタンキューでソファで寝てしまう生活。定期試験は部活中止の一週間前からがーッとやって学年15~20位を維持していました。


関東大会常連だった彼女の中学が、あろうことか都大会の準々決勝で敗れてしまい、失意の中、受けた翌週の新教育のWもぎ。心ここにあらず、状態でもあったのでしょう。それに定期試験しか受けていなかった彼女に会場模試はすべてが初体験、もっている力が出し切れなかったのだとも思います。区立の中学の順位から類推すれば、悪くても50台後半のはずですが。


「がーーん!!これじゃ、行きたい都立高校(ソフトでインターハイの常連)に受からない!(その学校の80%合格偏差値は57でした)」と慌てて、スパルタで鳴らすWアカデミーに入室、同時にお母さんのママ友が僕のかつての教え子のお母さん、というつてを頼って、ご依頼を受けました。


初回、体験授業で指導して、めちゃくちゃ賢い子ということがわかりました。スパルタのWアカデミーの夏期講習のテキストの予習を見てあげたのですが、習ってもいない三平方の定理を一回教えただけで、すぐに使いこなすことができる。英語も、知っているはずのない、「to have +過去分詞」(完了不定詞)を知っている。


「なんで完了不定詞なんて知ってるの?」
「は?なんですか、それ」
「いや、今あなたが使った『私はその賞を獲ったことを誇りに思っていた』の英作文で、I was proud to have won the prize.って言ったでしょ。普通、99%の中3生は、to win the prizeっていうのさ。過去を表す不定詞なんて知らないから。でもあなたは驚くべきことに完了不定詞って言って、過去のことを表す不定詞を使ったの。で、どこで習ったのかなって、思ったのさ」
「あ、うちのソフトの顧問、英語の先生なんですよ。で、いつか、外国人に浅草で道聞かれたときに、 to +have+過去分詞使っているように聞こえたんで、後から聞いたんです、顧問に。そしたら『昔から見た大昔はそういうんだ』(なんというラフな説明!)って言ってたんで」
「うーん、あのさ、それってどのくらい前の話?」
「去年の秋くらいですかね。浅草の近くの中学に練習試合行ったんで」


たまげましたね。


記憶力もいい。でもそれくらいの記憶力の子はいます。
びっくりしたのは、その会話で、「大過去」の概念を取得し、それを使いこなす(何か月もたって)こと。


いるんですね、こういう子。


最初、僕は都立G高校に行きたいと言っているこの子がWアカに申し込んだと聞いたとき
「そもそも、それ自体無意味だよなあ…」って思いました。Wアカはご存知、早慶狙いの子に特化した塾ですからね。


でも、いや大正解じゃん、って思いなおしました。


あとは、上に書いた通りです。
おそらく全国でも何番目かにハードなその中学のソフトボール部の練習を全うしただけの根性もある。それにこの頭の切れ。怖いものなし、でした。


結果は早稲田実業合格。豊島岡女子、明大明治、市川も合格。青山(都立)は私立全滅のときのために出願していましたが、当然不受験。


この子は、Wもぎで偏差値23伸びましたが、もっと伸びてるはずです。というのは新教育のWもぎは、偏差値の上限が75くらいで5教科すべて満点とっても、偏差値76くらいしか出ない。でも、僕の体感からすると、最後のころはWもぎの偏差値で言うと85くらいになってました。塾で進められて受けた河合塾の模試でも64とってましたから。河合塾の模試で60は、Wもぎの72くらいです。要するに尺度が違う。


でも、こういうのは、本当にレアなケース。


「特殊な事例を一般化して話す」というのは騙しの典型的なレトリックですね。


そういう事例は世の中にいくらもある。

でも、だからと言って「偏差値39から60に伸ばす家庭教師」というのは、残念ながらあり得ません


その文脈で言っている「偏差値39から60に伸びた」っていうのは、サピックスなり日能研なり、四谷大塚なりにずいぶん前から通っていて、5年の秋の偏差値が39で、そこから家庭教師付けたら偏差値60になって、MARCHの附属や、芝や吉祥女子に受かったっていう話でしょ。


それはない。蓬莱の玉の枝みたいなものです。あったら素敵だが、おとぎ話の中にしかないもの。


では、上のような子がプロ家庭教師の手を借りたらどれくらい伸びるのか。(最もうまくはまって)


それは次回にしましょう。